眠い目をこすりながら、現在住んでいる西海岸はロスアンゼルスの空港を朝6時に発つ飛行機に乗りこむ。シカゴ経由で、東海岸の街フィラデルフィアに降り立ったときは(時差もあり)既に夕方5時近かった。空港から、フィラデルフィアの公共交通を提供する SEPTA の電車に乗り、市内へ。ホテル最寄りの駅で降り、荷物を引きずりながら宿に向かう。そのときに目にした 、“Insurance Company of North America” の看板を掲げた古めかしい建物。北米保険会社だなんて、面白い名前だなと(無知な私は)思っていたのだが、たまたま同行者が持っていた「アメリカの金融制度(東洋経済新報社)」という本の保険の頁を見ていたら、1790年代に設立された、米国最古の株式会社形態をとった保険会社である旨書かれていた。
そんな歴史のある街、フィラデルフィアで、9月6日に、CPCU 資格授与式(conferment ceremony) が開かれた。
試験日の前日、前々日の夜からの試験勉強。補助教材s.m.a.r.t. を使い、15章で構成されるその科目の見出しを眺めながら、用語定義集をパラパラめくっていくのがお決まりの準備。惜しくも合格点に到達せず、再受験することも。一定期間内であればいったん指定した試験日の延期も可能という、便利ではあるが、意思の強さが試されるシステムのために、意思の弱い私は試験日をぎりぎりまで延期し、挙句の果てに、一日二科目を受験する羽目となってしまうこともあった。正直あまり褒められた受験生ではなかった私も、計7科目(CPCU530は、NY州弁護士資格保有により免除)に合格するのに一年余り、それなりのストレスがあった生活をくぐり抜けた自分を褒めようと、華やかに執り行われる資格授与式の場に参加することにした。
1998年に入社して4年間は、貨物海上保険の損害サービスに携わっていた。お客様の貨物が被る物流上の損害の規模・可能性が少しでも低減するよう、お客様のロスプリベンションのお取組みに参加させていただいたこともしばしば。その中で学んだことは、データや知識から仮定を立てること、その仮定が正しいのかどうかを第一線の声から考えること、その仮定が正しいことがある程度確からしいと判った上で対策を立てること、対策を実行に移す際にも第一線の声をきくこと、実行に移された対策に効果があったかを確認すること、である。
なぜこのようなことを書いているのかといえば、私にとってCPCUに限らず、資格試験の学習をする意義がそこにあると考えるからである。学習から得られる知識や体系は、目に見える状況をある程度理解し、仮定をたてるために必要なものとして重要な意義がある。同時に、そうした知識に基づいて立てた仮定は必ずしも正しいとは限らず、現実の状況に照らした検証が必要だという注意書きも忘れぬよう心がけている。
授与式の会場となったのは、The Philadelphia Marriott Downtown 。Registrationが始まったのは午後2時。ハリケーンの影響で強まる外の雨脚とは対照的に、にこやかな資格取得者と同伴の家族がかもし出す穏やかな雰囲気で場が満たされていた。授与式の開始は午後4時。参加者が概ね着席し、照明が落とされ、少し静かになった大きなBallroom。前方のステージで始まった国歌斉唱。いよいよ幕があがった。
信念とユーモアに満ちた数々のスピーチ。その一つ、主催者によるプレゼンテーションには以下の言葉があった。“It’s just the beginning” 。2005年にシカゴの Northwestern University School of Law (LL.M.) を卒業した時、卒業式を Commencement (始まり)と称するのを聞いて、なるほど、と思ったのを思い出した。ここでいう “It’s just the beginning” もまさに資格取得が終わりではなく、始まりだということを意味している。加えて、私にとっては、次のことを改めて認識させるメッセージだった。今般のCPCU資格取得の過程で得られた沢山の知識や体系は宝物であること。そして、それを、実務経験やお客様の声とあわせてどのように発展的に使っていくかが大切であること。